つまりドラマ視聴者からすると、ドラマを視聴した後に、文字通りネイティブなテレビCMとして日産自動車のCMが流れ、ドラマ中に楽しんでいたのと同様にネイティブな視聴者参加型のクイズ企画として日産自動車のサイトに誘導され、ドラマ放映後にそのままクイズを楽しむ、という構造になっていたわけです。
これにより日産自動車は実際に企画サイトに若者を中心に約7万件の参加者を集めることに成功したそうです。最近の若者のクルマ離れに対する一つのアプローチとしても注目されますし、ドラマ視聴者がキャンペーンに対する多数の好意的な声をネット上に書き込んでいたのも印象的でした。
実際にキャンペーン後に実施したリサーチ結果では、キャンペーンによるブランド好感度が視聴者においては非視聴者と比較して6倍にも及んだそうです。通常のテレビCMを放送している広告主が、ドラマ視聴者からあまり印象が残らない存在であることを考えると、興味深い事例であると言えると思います。
当然こうしたドラマ毎にネイティブな広告を作るアプローチは、効率の面から考えると非常に手間がかかる難しい手法であるとも言えます。通常のテレビCMであれば一度作ってしまえば、ターゲットである視聴者が見ているであろう時間帯に広告主の好きなタイミングで放映することで大勢の人にそのメッセージを見てもらうことができます。
一方でリアル脱出ゲームTVにおける日産自動車のCMのように、ドラマ毎にカスタマイズして作成したネイティブなテレビCMは、そのドラマ以外の枠で放映すると途端に文脈が異なる、ネイティブでは無い普通のテレビCMになってしまうリスクがあります。
そういう意味では、リアル脱出ゲームTVにおける日産自動車のアプローチが、今後のテレビCMの主流にいきなり変わるということはないかもしれません。
ただ「ネイティブアド」という手法が、バナー広告のようなコンテンツを楽しんでいるユーザーにとってノイズでしかない存在ではなく、コンテンツと同様の存在として受け止められるように努力するという手法であると考えるのであれば、この日産自動車とTBSのチャレンジは、真にネイティブアド的な視聴者の目線からテレビCMや企画サイトの組み合わせを考え抜いた事例であると見えてくると思います。
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